2013年9月9日 8月の後半から、大気の不安定な状態がつづいて、急に天候が崩れることが多く、天気予報を見ても、 曇りの日が続いていた。ところが、この週になって、1日だけ全国的に晴れの日があった。
曇りが続く中に、晴れの日があると、目立つもので、かつ、お休みの日と重なっていると、出かけなければ損をする気分に なってしまう。

今回のテーマは、三重塔。 長野東信地方のこの付近には、由緒ある三重塔が多く残っている。
大法寺三重塔(国宝)、安楽寺八角三重塔(国宝)、前山寺三重塔(重文)である。
別所温泉も加えて、無理せずに回れるコースになる。

北向観音
<<北向観音:薬師堂>>

大法寺
<<大法寺;国宝三重塔>>
平日とはいえ、駐車場に車が一台も止まっていないと、ここでいいのか心配になる。
駐車場から出た所には、道の脇に石仏(羅漢像だそうだ)が並んでいる。古いような、新しいような・・。

石段を登って本堂(ではなくて観音堂)、そのわき道を登ると三重塔が見える。
姿がとてもきれいに、整っている。別名、見返りの塔ともよばれる、美しい塔である。

大法寺

この塔は、正慶二年(1333年)の造営で、一番下の層の屋根が大きめで、バランスが取れている。

専門的にみると、奈良興福寺の三重塔と同じ形式になるのだそうである。

将軍塚

<<将軍塚>>
別所温泉の温泉街。別所温泉駅のそばに、平維茂の塚がある。

最初は、石碑のようなものだけがあるのかなと思っていたのだが、 ご覧のように、高さが4メートル、周囲が10数メートルほどの円墳である。

一説に、能や歌舞伎の「紅葉狩」のもとになった、戸隠山の紅葉という鬼女を征伐するために派遣された、 余吾将軍平維茂の塚とも言われている。

七苦難地蔵

<<七苦難地蔵>>
別所温泉は、「七久里の湯」と呼ばれていて、その名から「七苦離」に通じ7つの苦難から解き放たれると信じられていた。
常楽寺の地蔵尊をこの地に安置し、七苦難地蔵尊として、祀っているとか。

将軍塚の交差点の反対側にある。

常楽寺
<<常楽寺>>
御舟の松越しに見る常楽寺の本堂。

常楽寺は、三楽寺(常楽寺、安楽寺、長楽寺)のひとつで、800年代の創建。

常楽寺

常楽寺

<<常楽寺:石造多宝塔>>
北向観音の出現地と言われる場所。

この多宝塔の由来と言えば、
「平安時代の初めに、この付近の地面が突然ゆれて、大きな火の口があき、紫色の煙がたちのぼった。 その中に金色をした千手観音のお姿が見えたので、北向の観音堂を建て、その像に似せて作った仏様を安置した。

そして、この仏様が地中から現れた火口跡に、木造の多宝塔を建立し、常楽寺境内の最も神聖な場所とした。 

ところが、鎌倉時代にこの多宝塔が火災で焼けてしまったので、1262年に、今度は石で多宝塔をつくった。」

聞いたからそう感じるのかどうかはわからないが、パワースポットのような神秘的な雰囲気のある場所である。

別所温泉全景

<<上田方面>>
常楽寺から安楽寺に向かう途中に、別所温泉とその先の山々を望む展望台がある。

アクリルの表示板に山の名前が書きこまれてあり、アクリル板ごしに実際の景色と対応できるようになっている。
実際には微妙にずれている気がする。

山の名前は覚えられない。奥の方に浅間山が見えているはず、なのだが・・。その先は群馬県。

安楽寺
<<安楽寺>>
山が近いせいか、どのお寺も石段を上がって山門をくぐるというパターンになる。
本堂前には、大きな高野槇の木をはじめ、緑でいっぱいになっている。

ここも、本堂脇から裏山に登ると、八角の三重塔がある。

安楽寺
<<安楽寺:国宝八角三重塔>>
国内で唯一の八角の三重塔である。
中国には多数ありそうなのだが、仏塔ということになると、仏光寺の無垢浄光塔のみであるという。

山道の途中から見上げる軒裏の照り返しの明るさが、目にまぶしい。

敷地が狭いので、なかなかベストのアングルが決められない。 やっぱり、塔の場合は、見上げるかたちがいいのだろうか。

安楽寺

<<安楽寺:黒門>>
境内からは離れているのだが、ここが安楽寺の入り口になる。
崇福山とは、安楽寺の山号である。

北向観音
<<北向観音:参道>>
参道沿いのお土産店。
善光寺とは比ぶべきもないが、相対する観音堂としては、立派な商店街ではある。

ここのお店で肉うどんを食べた。 濃い汁に、チャーシューのようなお肉という、変わったうどんだった。 どちらかというと、このうどんは、好みに近い。

北向観音
<<北向観音:本堂>>
寺社は、普通は南か東を向いているものらしいが、この北向観音堂は、北を向い建っている。
丁度、南を向いている善光寺本堂と向き合うような形になっている。

そういったところから、来世利益を願う善光寺、現世利益を求める北向観音の両方にお参りすることで、現世来世の幸福が実現されるという。

北向観音
<<北向観音:薬師堂>>
本堂の右の道を入ったところに、立派な懸造りのお堂がある。

北向観音

<<北向観音:愛染桂>>
境内には、大きな愛染かつらの木がある。
北向観音の伝説では、前の常楽寺の伝説の中で、火口から現れた仏様=十一面観音がこの桂の木の上にとどまり、 仏像を作って北向きに安置せよとおっしゃったとかいうのが、この木になる。

また、愛染かつらの木と言えば、川口松太郎の小説「愛染かつら」で有名で、縁結びの霊木ともいわれる。

前山寺
<<前山寺:三重塔>>
別所温泉から離れ、前山寺に向かう。

ここの三重塔も、きれいなシルエットを見せる。
ただし、未完成とのことで、二重三重には、扉、窓、廻縁、勾欄などがない。

前山寺


この付近には、戦没画学生の絵画を集めた、無言館もある。